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Watering ウォータリング

Mapping experiment in different contexts for 8 performers including dancers (2019)

(Version for 7 performers also exists)

異なる文脈におけるマッピングの実験

ダンサーを含む8人のパフォーマーのための (2019)

(7人のパフォーマーのためのバージョンも存在)

Duration: ca.30’

演奏時間:約30分

Instrumentation: Clarinet, Violin, Violoncello, Piano, Electronics

編成:クラリネット、ヴァイオリン、チェロ、エレクトロニクス

プログラム・ノート:

タイトルであるWateringには、水やり、波紋などの意味があります。また副題にあるマッピングとは、ある要素を何らかの規則に基づいて、他の要素に対応づける事を意味します。

 

振付家の青木尚哉さんとの最初の打ち合わせの際、水に関するイメージの話を共有し、それが今回のコラボレーションのスタートとなりました。楽器によって演奏される音素材の多くは、水滴が着水して波紋を形作るというイメージから作られており、作品中、それらの要素は繰り返し現れます。一方で青木さんは波紋という単語から、人間関係や社会における波紋の意味を連想し、人間の日常の動作を組み合わせた動きの素材を作り、それらを音素材にマッピングしました。そこから、更なる音素材や動きの素材の組み合わせへのインスピレーションを得て、新たにマッピングをする、といったキャッチボールを何度か経て、このような形となりました。

 

冒頭、まず日常的な動きの要素の基本的な形が示され、それに日常生活で耳にする様々な具体音、環境音がマッピングされます。これらの動きと音の要素は作品を通して繰り返し現れます。その後、水のイメージから作られた音素材のパターンに対して、同じくパターン化された日常的な動きがマッピングされます。加えて、それらの要素に具体音や環境音、編集されたラジオの音声等がコラージュ的にマッピングされていきます。

 

作品を通して断片的に聞こえるラジオの音声は、1941年12月9日に、アメリカ、コロラド州の州都デンバーで行われた、その2日前に起こった真珠湾攻撃に対する複数の男性市民へのインタビューの収録です。インタビュー中、司会者は真珠湾攻撃に対する反応の他に、彼らの名前、年齢、出生地、職業、年齢が高めの男性には結婚しているか、そして徴兵には応じるかと繰り返し尋ねます。作品後半には、日本のNHK、アメリカのNBC、そしてイギリスのBBCが報じた、太平洋戦争開戦のラジオ放送を断片的に編集した素材が挿入されます。淡々と事実を報じるBBC、戦意高揚のためか荘厳な音楽や軍艦行進曲も流れるNHK、シリアスなニュースの合間にプリンのCMやハリウッドからのジャズ演奏が挟まれるNBCと、各局のスタンスは様々です。特にNBCの、日常と戦争が隣り合っているイメージから強い印象を受け、多く素材を切り出しマッピングしました。

 

コラボレーションとはまさに、異なる文脈におけるマッピングであると思います。今回、水というイメージから始まったマッピングの実験、様々な切り口から楽しんでいただけると幸いです。

Contour I 輪郭 I

for any number of dancers and 3 instrumentalists (wind, string, keyboard) (2019)

任意の数のダンサーと3人の器楽奏者のための(管楽器、弦楽器、鍵盤楽器)(2019)

Duration: ca.30’

演奏時間:約30分

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