Teppich der Erinnerung 記憶の絨毯
for Piano (2017)
ピアノのための(2017)
Duration: ca.15’
演奏時間:約15分
プログラム・ノート:
この曲は、同じタイトルを持つ連作絵画のように、そこに描かれているかたちはそれぞれ異なるものの、素材とコンセプトを共有する4つの楽章から成り立っています。ピアニストがランダムな幾何学模様をその場で生成していくというイメージで作曲されました。
ウィキペディアによると幾何学模様とは、
"三角形、四角形、六角形などの多角形や円、楕円、直線などの単純な図形を部品として、それに平行移動、反転、回転、色の変化、拡大、縮小、分割などの操作を加えながら、連続して組み合わせ配列を展開して作った模様。同じ操作を繰り返すことで無限の模様展開が可能である" https://ja.wikipedia.org/wiki/幾何学模様
とありますが、まさに上記のようなことが作曲上行われています。具体的には、2, 3, 4, 5, 7音から成る黒鍵または白鍵によるクラスターと半音階が部品となり、楽章ごとに異なる拍節構造を持つループのパターン上で上記のような操作を加え、それぞれの部品を組み合わせて模様として展開させました。
タイトルは、パウル・クレーの同名の絵画によります。絨毯をモチーフにしてはいますが、必ずしも規則的なパターンが広がっているわけではないところがこの曲と共通しています。
Ascending アセンディング
for Bassoon (2015)
バスーンのための(2015)
Duration: ca.8’
演奏時間:約8分
Program Note:
The title of the piece “Ascending” comes from one of the paintings by Morris Louis (1912 - 1962), American painter and one of the leading figures of “Color Field Painting.” Before composing this piece, I was in Japan and visited the “Kawamura Memorial Museum” in Sakura, Chiba. There is a famous “Rothko Room” in the museum in which 7 paintings by Mark Rothko are displayed, and the main purpose of my visit was to see the room. After very inspiring time in the Rothko Room, I met a painting of Louis called “Number 1-49” in another room and I was immediately fascinated by that. I stayed in the room for a while and looked at the painting from different angles and distances. The time I spent there was extraordinary to me and I wanted to bring the feeling into my piece. “Number 1-49” is one of his so-called “Stripe Paintings” and “Ascending” is also one of them. Each “Stripe Painting” looks similar at a glance but they are actually very different if one looks at them carefully. It somehow reminds me of our lives. We do similar things every day but nothing is the same. We repeat them until it stops as the Stripes painted by Louis. In my piece, similar things are also repeated, but they change constantly as if one looks at his panting from different angles and distances.
プログラム・ノート:
この作品のタイトル、「アセンディング(Ascending)」は、カラーフィールド・ペインティングというスタイルの重要な作家の一人である、モーリス・ルイス(1912-1962)の作品から取られています。作曲前、私は千葉県佐倉市にある川村記念美術館を訪ねました。そこにはマーク・ロスコの7枚の絵画が飾られた有名な「ロスコ・ルーム」があり、私の来館の目的はその部屋を見ることでした。その目的は果たされ、インスピレーション溢れる時間を過ごした後に、別の部屋で私はルイスの「No.1-49」という絵画に出会いました。私はその絵に即座に魅了され、長い時間その部屋にとどまり、様々な角度、また距離からその絵を見続けました。その時間は私にとって、本当に特別なものであり、その時に感じたものを今回の作品に持ち込めたらと考えました。「No.1-49」はルイスの作品群の中でいわゆるストライプ・ペインティングと呼ばれるもので、「アセンディング」もその中の一つです。それぞれのストライプ・ペインティングは、一目見た瞬間はとても似て見えます。しかしじっくりと時間をかけて見ると、実はとても異なったものだということがわかります。それは私に人生を思い起こさせます。私は毎日同じようなことをして過ごします。しかし、全く同じ日は二つとありません。それはまるでルイスの絵の中のストライプのように、私たちの人生が終わる瞬間まで続きます。今作品でも似ている物事が続きます。しかしそれらはまさに、ルイスの絵を異なる角度や距離から見た時のように変化し続けるのです。